shiori "永い言い訳" 2026年9月28日

shiori
shiori
@shiori_417
2026年9月28日
永い言い訳
永い言い訳
西川美和
2026年に出会った本の中でも、確実にベスト10に入る作品だった。 (なんで今まで読まなかったんだろうとも思ったけど、今のタイミングだからこそ感じ取れたことも多いのかもしれない。) ずっと「妻を亡くした夫視点の話」のみだと思っていたので、幸夫がメインではありつつ大宮家との交流があり、彼らの視点での話も入ってくるのは予想外だった。 事故で家族を失い、それぞれに傷ついていた遺された人たちが、新たにできた関係性の中で近づいたり傷つけあったりしながら、それでもいつのまにかさらに深い関係を築き、生きていく、その姿が本当に美しいと思った。 “ あのひとが居るから、くじけるわけにはいかんのだ、と思える「あのひと」が、誰にとっても必要だ。生きて行くために、想うことのできる存在が。つくづく思うよ。他者の無いところに人生なんて存在しないんだって。人生は、他者だ。ぼくにとって、死んだ君が今になって、「あのひと」になりつつあるような気もするよ。遅いかあー。” もちろん、幸夫と夏子が生きているうちにそう想い合える関係が築けたら、それが一番よかったのだろうけれど、失ってみて初めて分かること、理解できることもある。 後悔する気持ちは当然だし、幸夫が「これからも俺の人生は、ずっと君への悔恨と背徳の念に支配され続けるだろう。」と言っているとおりだけど、一方誰かに対して「もっとこうすればよかった」と後悔するのって、その人への愛情の裏返しだとも思った。 “愛するべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくはない。別の人を代わりにまた愛せばいいというわけでもない。色んな人との出会いや共生は、喪失を癒し、用事を増やし、新たな希望や、再生への力を与えてくれる。喪失の克服はしかし、多忙さや、笑いのうちには決して完遂されない。” とも書かれているけれど、愛するものを喪った悲しみを、他の人や何かで穴埋めすることなんてできなくて、なかったことにすることも、克服することもできず、ただその事実を抱えて、一緒に生きて行く以外、人間にできることはないのかもしれない。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved