サンタマン "タタール人の砂漠" 2026年10月3日

サンタマン
@santaman
2026年10月3日
タタール人の砂漠
タタール人の砂漠
ディーノ・ブッツァーティ,
脇功
すごく嫌な気分になる良い小説だった。 以前読んだ「パリ行ったことないの」は、パリに行くことを憧れて心地良く現実逃避している女性たちが、現実に我に帰り現状を変えようとしてパリに行くという前向きなパワーを最終的には感じた。 けれど本書は、どうしようもなく後ろ向きな気分になる小説で、退屈で無機質な現実を受け入れてしまった男性たちの話だった。現実を半ば諦めているから、タタール人がいなければ人生が本当に無意味になってしまう。現実逃避しないとやってられない。だからこそ何もできないけど、タタール人という空想に縋りながら毎日をやり過ごす。 「パリ〜」を読んだ後は、現実逃避をしながらも、目の前のことに集中して生きていきたいという感想を持った。 けれど、本書の主人公は一応そういう生き方をしたわけだよな… 「パリ〜」の感想が本書には当てはまらないのは、「パリ〜」の女性たちは現実にある程度満足していて、そのうえでパリ旅行という短期的な変化を起こすわけだけど、本書の男性たちは現実が退屈で、変化を起こすならこれからの生活も変えるという長期的な変化が必要という違いにあるのかも。 両者の登場人物のほとんどは結局長期的な変化は起こしてないわけだから、「パリ〜」の人たちが本書の人たちみたいになるかもしれないし、その逆にもなるかもしれない。 だから、長期的な変化を起こさない人々の人生における一瞬の輝きと長い退屈をそれぞれ描いていると読めそう。
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