
猿馬大咳
@sarubaaaaa
2026年10月4日
さようなら、ギャングたち
加藤典洋,
高橋源一郎
高い評価を受けている作品と聞いて図書館で借り、読み終わった。
詩や名前というものに対して、定義というものに対して、捻くれながらも真摯に取り組んでいる作品……とも言い切れない。
実のところ、私は『評価されている小説だから』という理由で全て読み尽くして、しっかりと面白いとは思ったのだが……あまり実感は湧かない。しかし私が面白いと思ったのは事実であり、今もそれは揺らがない。なので、胸を張って面白かったとは言えるが、お勧めできるとは言えない。
なにしろこの小説は、小説としての体型を成しているだけで、全体を通してどこか浮ついている。要は独特の詩のような文体なのだ。
初心者どころか、小説好きのおじいちゃんにも勧めにくい。舞城王太郎とか好きな人は読めるんじゃないですか?(実際、私の見たティアー表のようなもので、『ディスコ探偵』と同率で最高点を叩き出していたから、感性が似ている人にお勧めしたいな)
この物語で生きているのは文字だけだ。それは額面通りに受け取ってくれても構わない。人の存在を確かめるのは名前であり、「彼」であり「彼女」であり「わたし」。そしてそれらの本質は「廊下」であったり「椅子」であったり「ペット」であったりする。
人間という形態に当て嵌めて物語を想像してはいけない。それどころか、他の動物にしたって油断は許されない。
主人公「さようなら、ギャングたち」が一緒に暮らしている女性「中島みゆきソング・ブック」と飼っているペット(推定猫)「ヘンリー四世」が、人の言葉を話したり、やらかしを誤魔化すために別の生き物の鳴き声を真似して、挙句短編集も読みたがる。
そもそも、信頼すらしてはならない。文字が猫と言っているだけで「ヘンリー四世」は猫ではないかもしれないし、迎えた結末も本当はそうなっていないのかもしれない。
重要なのは存在であり、文字である。
序盤で説明された、「自分の名前に殺された者」の話も非常に興味深い。
後々に、それらの伏線回収も極めて残酷に行われることも、この小説が小説であることを認める一因だった。
石球城でもそうだったけど、この話もまたネタバレなしで読んでもらいたい。
そして衝撃のラストを体感してもらいたいな〜と思う。
お勧めはしないけどね。