阿久津隆 "熊 他三篇" 2026年9月23日

阿久津隆
阿久津隆
@akttkc
2026年9月23日
熊 他三篇
熊 他三篇
ウィリアム・フォークナー
今日は先日店から持って帰ってきた『熊 他三篇』にして、『征服されざる者たち』の前に読みたくなった模様。それで「熊」を読み始めて、のちに「アイクおじさん」になるアイザックの少年期の話だ、かつて読んだとき、この作品がすごく好きだった印象があったが、読み始めてみるとやはり面白く、狩りの話で自然がたくさんでおおらかで悠々としていてこの上なくリーダブルで、ともに森の中を散歩しているみたいな心地だ、だいぶ後期の作品なんだろうか、もう難しいことはいいや、みたいになったのだろうか、と思いながら読んで、毎年11月の狩猟キャンプの時期にオールド・ベンと呼ばれる大熊を追いかける男たちの話だが、完全な敵対というふうではない距離感が描かれていて、犬や家畜が殺されることがあることも含め、それぞれの了解があるような、そういう関係で、少年は森を少しずつ知っていって、その後70年のあいだ通い続ける森と親しくなっていって、しかし熊との邂逅はなかなか果たされなかった。あるとき指導役のサムから「おまえ、どちらかにせねばならんのさ」と言われた。次の夜明け前、磁石と棒だけを持って森の中に入っていった。寝ていた仔鹿を驚かせて、仔鹿はすごいスピードで駆けていった。 p.34,35 こんなことも彼が、サムに教えられた通り、風下から来たからのことだ。しかしそれもいまはどうでもいいことだ、なぜなら彼は銃を置いてきた身だからだ―それも彼自身の意志からしたことだ―自分を放棄してのことだ。それは熊と出会うための唯一の条件であり、それを彼は受けいれたのだ。それは大熊の変幻自在な動きばかりか太古からの狩人と狩られる者とのあいだのかけ引きのすべてを忘れることであり、彼はその条件を受けいれたのだ。 しかしそれにしたって、熊と邂逅しちゃっていいものなのか、と心配しながらも、森の空気は冷たく張りつめていて、さまざまな音で満ちることによって生じる静けさがそこにはあって、気持ちがよく、そのあと熊が立っていて、想像したとおりの大きさだった。
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