紫香楽 "春にして君を離れ" 2026年10月5日

紫香楽
紫香楽
@sgrk
2026年10月5日
春にして君を離れ
春にして君を離れ
アガサ・クリスティー,
中村妙子
多分こういう話なんだろうな〜と思いながら読んだが実際そういう話だったし、序盤からかなりその感が端々から漏れ出ていた。 ちょろっと出た人の話が後からまた詳しくされたりすることが多く、「えーとさっき見た名前な気がする…」と探すことが多かったので、Kindle版も便利そう。 多分叙述トリックなんだけど、現代ならそれなりに多くの人が読みながら真相には気づけるんじゃないかと思う。 読者へのヒントもかねているのだと思うけど、ジョーンの周りには校長のような忠告をしてくれる人もいたわけだけど、まあ、このタイプの人は気づかないし聞かないよね…。 例えば夫が農場をしたいと言った話なんかも、実際は一度限りの気の迷いではないように話されているんじゃないかと思うんだけど、この手の人にかかれば「そんなの聞いてない」になってしまうんだよな。 それだけに終盤突然なにという明確なきっかけもなく一人で真相に気づき始めたのは驚いたし、ご都合主義なようにも思った。 でも結末としての選択は結局アレなので、トータルではご都合主義でなく、怖いしつらい話だな……という印象になる。 うちもかなり母親がこのタイプの独りよがりで人の話を聞いてない人なので、「あ〜…」という感じなのだが、それなりの年数生きていれば多くの人間が読みながら「自分自身もこうなのかもな」という恐ろしさを感じずにはいられないんじゃないかと思う。 感じない人もいるだろうが、そういう人は心配なのでもう少し自身を省みたほうがいいかも。省みたら必ず気づけるわけでもないと思うけどね。でも少なくとも省みなければ絶対に気づくことはないんだろうから。 にしてもジョーンは一度気がつけたのに、「そんなはずはない」とそれを振り払ってしまったのは本当に勿体ないことだ。 「他になにもすることのない砂漠」での内省からそこに至ったというのは、日々の仕事の忙しさや疲労、SNSやショート動画で常に脳や耳をいっぱいにしてなにかを深く考えたり己を省みたりすることから遠ざかりがちな現代人には、省みるべきところがあると思う。
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