虚実書店マボロシ "月と六ペンス" 2026年10月4日

月と六ペンス
月と六ペンス
サマセット・モーム,
William Somerset Maugham,
金原瑞人
面白い。前提の部分は読みづらかったが、ストリックランドが家を出たらもう止まらない。 今の時代から見て、欧米中心主義、男性中心主義的すぎる部分はあるけど、だからといって読まないのはもったいない。 題材は芸術に取り憑かれた男とその周りの人の運命。展開は意外性があり劇的。ユーモアと人物造形も自然で魅力的。と小説としての魅力がこの上もなく楽しい。 素材はゴーギャンをベースにしているだろうけど、主題はまた別なところだと思う。 天啓とも言える創作欲求を抱えてしまった男。絵(表現)に邁進していく姿は、世の中の表現者が「かくありたい、これこそが芸術家の理想的な姿だ」と思われるような人物になっている。 これか、と。世の中の人が共有している芸術家のイメージは。と思わないでもない。もっと昔(作品は1919年発表)から、こういうイメージはあったのだろうと思おうけど、これほど面白く求心力の強い「芸術家というものはこうあってほしい」像を作り上げられると、芸術家像がこのイメージに収斂していくのも無理はないと思うほど魅力的だった。 逆に、世間ではストリックランド的な芸術家像を正解として浸透し切っているので、楽しく魅力的でストリックランドとは真反対な芸術家像を打ち立てたら面白いとも思う。せっかくなので、北斎でできないものだろうか。 人物も良かった。特にストルーヴの関わるエピソードが全く共感も現実味も感じなかったけど、納得させられてしまうし、あまりにも切なくて良かった。アマデウスのサリエリを思わせる切なさ。 イギリス、フランス、タヒチで同じ小説か?と思うほど内容が違うのも面白かった。 参考程度とは思うけど、ゴッホの友達くらいの認識だったゴーギャンが改めて知りたくなった。
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