
Suzuki
@finto__
2025年4月11日

家庭用安心坑夫
小砂川チト
読み終わった
★★★☆☆
「母はたぶん、〈なにが?平気だけど?〉という顔をするのに命がけのひとだったのだ、といまでは思う。ひとから不憫がられるのをものすごく嫌っていて、そのくせみずから一番不憫がられるほうへ向かって行くという奇妙な生き方を選んでいた。おそらく、意地になってひとりで小波を産んだことを後悔していたが、かたくなにそれを認めたがらなかった。たとえばなにかの拍子にうっかり片腕を無くしたとしても、〈え、どうして?あたしずっと腕なんか二本も要らないと思ってたし、はなからこうするつもりだったんだけど?〉言い出しそうな、彼女はそういう異常な負けん気をもっていた。だから、それこそこんなふうな人物評はとてもかわいそうなんだけれど、あのひとはじっさい問題、徹頭徹尾、不憫なひとだったのだ、と小波は思う。」p66