
ユースケ
@yusuke_1130
2026年10月7日
ウィステリアと三人の女たち
川上未映子
読み終わった
@ 電車
四篇を読み終えて、やはり表題作にはヴァージニア・ウルフの影が濃いと感じた。時間が直線的に流れず、記憶と現在が溶け合い、語り手や人物の境界まで少しずつ曖昧になっていく。その体裁は『灯台へ』や『波』を思わせる。
ただし、単なる模倣ではない。川上未映子の文章には、ウルフよりもずっと生々しい身体感覚や、女性として生きることの居心地の悪さ、そして日常の可笑しさや俗っぽさが残る。意識や時間を抽象化するのではなく、最後まで身体と生活に引き戻してくるところに、川上未映子らしさがある。
四篇のなかでは「シャンデリア」も特に面白かった。大きな事件ではなく、日常の表面がわずかにずれ続け、その違和感がいつの間にか不穏さへ変わっていく。表題作のモダニズム的な技巧とは別のかたちで、川上未映子の持つ、人間関係と身体の微妙な歪みがよく表れていた。
女たちの記憶、身体、時間、他者との距離。四篇それぞれ形式は違いながら、同じ場所を何度も別角度から照らしているような短編集だった。
