
あおたむ
@aooimmo
2026年10月8日
多類婚姻譚
凪良ゆう
読み終わった
【感想 自分用 ネタバレあり】
「Beautiful Dreamer」と「Position Talk」が個人的にすごく刺さった。
「Beautiful Dreamer」では、恵斗にとことん尽くす香織にイライラしてた部分が多かったし、それも「恵斗が好きだから」ではなく、「恵斗と結婚するために」ということが全面的に出ていた。所々、恵斗が遅刻したり、香織のことを大切にしていない、ぞんざいに扱っている描写があったので最初は恵斗のことを批判していたけど、加奈、大地と会って4人で話している時に、「確かにこういう人達が周りにいるとそういう考えになるよな」と思ってしまった。結婚を急いでないというか、結婚が全てじゃないという感覚は、結婚を急ぐ香織と全く違っていて、多分一生理解できないと思う。
以前田舎で育った友達と話していた時に、進学や就職に対する思いが全く別物だったことに衝撃を受けたのと、多分同じ。
極論、「結婚しなきゃ満足な生活を得られないのは、大きな企業に勤めたり高い賃金を得れる仕事に就いていないからであって、それは良い大学を出てないからであって、それは小学校からみんな平等に与えられている勉強する期間に一生懸命勉強してなかったからじゃないの?」と、私は思ってしまう。
でもそれって都会で育った者、実家というセーフティーネットがしっかりしている者の特権であって、香織のような環境だと、結婚が唯一の安定した生活を得れる手段になってしまうんだなと思った。
所々で出てきていた、お父さんからの手紙が、私にも途中から苦しかった。
香織もこんな風に苦しみたくはなくて、純粋に自分のことを愛してくれる親に優しい言葉をかけられて、でも都会に来るとそれは甘ったれになってしまって、じゃあ自分の今までの人生ってなんだったんだろうって思っちゃうと思う。
加奈達の会話を聞いて、「そうやって恵まれてることを自覚してますってことを全面的に出して議論することで満足してる。結局は何も変えようとしない」というような香織のセリフは、本当に的を得ていて心が痛かった。理解したようなフリをして、それでもそれには特有の悩みがあると言い訳をすることで、結局「自分が社会的に高い位置にいて、それでも聡明だからそれに驕っていない」と思いたいんだなと思った。私が色んな本を読んで、色んな知見を広めたいとか言ってるのも、多分これに当てはまる部分もあって、「色んな状態、主に自分にはない問題を抱えてる人の感情を本を通して知ることで、色んな角度から物事を考えられるようになる」とか、これはただただ恵まれてる者のためにある。恵まれてる者が、色んな感情を体験するアトラクションのようなものに近いと思った。
すごく高慢だし、愚かだなと思った。
「Position Talk」では、感情的な朱里にイライラしつつ、その内容は私にも通ずるところがあった。
私はまだ働いていないから、昇進とか異動とかそういう社内での女性の立場の弱さみたいなものは分からないけど、朱里が言う「君の意見を尊重するよって言って、出産や育児で何かあった時に全て責任を押し付けられたくない。」っていう気持ちはすごく分かる。産後うつになったり、ノイローゼになったり、保育園が見つからなかったり、そうした時に自分も休みを取ったり積極的に解決方法を探したりする覚悟はあるのかってことなんだよね。律が言う、「やってもないことを責められるのは嫌」っていう気持ちも分かるけど、でもそれで言質を取らないと悲惨なことになるのはこれまでの時代で分かってきたからってことだと思う。「先人達の男の罪のツケを払わされている」っていうのは本当にその通りだと思う。出産も育児も家事もいつも主体的になるのは女だからこそ、良い部分だけじゃなくて悪い部分も想定して、その時に一緒に並走してくれるかどうか、その覚悟を聞いているのに、「まだ分からないのに」とかそういうこと言われると、「考えていないんだな」ってなるのも分かる。
結局律は部長に優遇されてそのままのポストに残ってるし、そういうことを言わずにあくまで被害者の形で今回書かれていたのが、なんか生々しいし上手だなと思った。
じゃあ結婚する意味ってなんだろう?って余計に思った。色々想定して、確認をとってお互い結婚後もスムーズに生活を送りたいのに、違う角度から見ればそれは「圧」に変わることもあるし。
5章目は、全体的に不倫している人の気持ちは分からないので理解はできなかったし、ただのエンタメとして別次元の話を聞いている感覚でいたけど、祥子の「よく知らない相手のために、良かれと思って、という善意でなされるアドバイスのほとんどが的外れであり、それを聞かせられる人間を相当うんざりさせている」という部分には考えさせられた。結局これも、自分を正義だと疑わない人間がしている愚かな行動で、自分もできる限りしたくないなと思った。
人にとって何にどう感じるかは違っているから、それを諭すようなことは今後もしたくない。
昨今のSNSトレンドを集めたような本だったけど、すごく考えさせられた。
