もぐもぐ羊 "棄郷ノート 増補版" 2026年10月9日

棄郷ノート 増補版
この本の過去の投稿で自分が李光洙がどう生きたのかを気にしてたことを思い出した。 でも李光洙は最初に出てきたけど、本題は日本生まれ日本育ちの在日韓国人の姜信子さんが自身の故郷を訪ねて、故郷とは何なのかを考える目的の旅だった。 この本は2000年に刊行されたものの増補版で、故郷を訪ねる旅をしたのは1998年頃なので、そのことを把握しないで読みはじめて「IMF?随分と通過危機を引きずってる街なんだな」と勝手に思ってた(そのあとすぐに気づいてよかった) 「韓国編」「上海編」「満洲編」「エピローグ」のうち「韓国編」を読んだ。 韓国編の序盤で李光洙と親交のあった人に会いに行ったエピソードがあり、そこで李光洙は「親日派」であったがそもそも「親日派」とは?みたいなところから掘り下げていたのがとても興味深く、解放後(戦後)韓国が新しい国家としてスタートするにあたって行政の知識がある者がおらず、結果として植民地時代の下級官吏がそれを担うことになり、解放されたものの今度は過去に親日派だった者を取り締まったり、南北のイデオロギー対立でいわゆる「アカ」を取り締まるなどの強権も発動されていた。 姜さんが崔仁勲の『広場』を想起していて、私も読んだけど、捕虜として巨済島に収容された後に釈放されても南北どちらにも帰る意思がなく第三国を目指すことになった主人公を重ねて考えてしまう。 また姜さんの本籍地を訪ねて親戚(姜さんの父のまたいとこの姜正烈さん)に会って話を聞くことができたところでの、相手と姜さんの温度差というか、姜正烈さんは血縁が訪ねて来てくれてこんなにうれしい日はないと喜んでいたのに対して、姜さんは本籍地がどんなところかつきとめに来たのでその「情」はわかず、軽率なことをしてしまったと感じていたようだった。 でも正烈さんに曾祖父の墓が風水的にあまり良くないから改葬した方がいいと言われて、それを日本に帰って母に伝えたところ息子(姜さんにとっての弟)の未来のために何とかしなくてはと動き出したというのがちょっとよかった。 訪ねた先々で「女の身で先祖を訪ねること」を不思議に思われてたことが、家父長制が健在なんだなということを感じた。 あと改葬についてはファン・ジョンウンの『年年歳歳』を思い出してまた読みたくなった。 あと映画の『破墓』も。 そういえばこの映画も親日派が絡むストーリーだったな。 気になったのが『DMZ』という小説が紹介されていて、著者名が「新人作家」としか書いてなくて(もしかしたら見逃したかも?)内容を読むにつけ映画『JSA』っぽくて、『JSA』の韓国公開が2000年だからちょうど旧版が刊行された頃か、なんてWikipediaを読みに行ったら原作パク・サンヨン『DMZ』って書いてあった。 邦訳が出てたら読みたいな。 映画もおもしろかったけど、小説から削ったエピソードがありそうなので気になる。 あとパク・サンヨンって『大都会の愛し方』の著者とは別人だよね? ハングルをカタカナ表記にすると同姓同名めちゃくちゃ多くなるから。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved