たま子 "長い一日" 2026年10月11日

たま子
たま子
@tama_co_co
2026年10月11日
長い一日
長い一日
滝口悠生
朝、鮭ときのこの炊き込みご飯とポトフ。珈琲をのみながら『長い一日』。滝口さんはスーパーオオゼキのことをたくさん話せて嬉しいらしく、こちらもにこにこ読みながら、そういえばこんな風に家とその周辺環境に愛着をもつのは、わたしはこれまでの人生で今がはじめてかもしれないなあ、と思う。それは家族といるといつもバランス取り役になるのがめんどうくさいと気づいてしまってから寝る時間以外は神社や公園で過ごす日々がつづいたり、いざ一人暮らしになってもあまりの労働環境にこれまた寝る以外に家にいない日々がつづいていたからで、ずっとどこかで仮暮らしの感覚があったような気がする。ここ数年でやっと家と近くのスーパーや書店を気にいりながら自分の家として暮らせるようになったのは、時間の余裕と、すこしずつ集めた本や家具などすきなものに囲まれていること、猫がきてくれたおかげもあるかもしれない。と、住みはじめた頃に家具屋で一目惚れして買った緑のソファに寝そべりながら思う。読んでいると、記憶の扉が静かに開いていき、当時ぼんやり感じていたことに、ぼんやりとした暫定の答えのようなものができ、これまでの人生と今の暮らしへの感情と頭の整理がすこしずつできていくような。 p221 このお寺の創建は天和元年二月とあった。一六八一年。窓目くんが生まれる三百一年前。三六年しか生きていない窓目くんはその長さをうまく計れない。  お堂のなかもほかに誰もいなかった。窓目くんは静かにゆっくりと足をくずして、あぐらをかいた。腿と膝の布地が伸び、その伸びをたしかめる。ああ、また一日がのびる。今日のなかに三百一年が入り込む。今日は心まで自由に伸縮して、テレパシーみたいに、どこまでも気持ちが届けられそう。 制作物を一部担当した関係で、夕方から萬福寺のライトアップイベントとトークショーへ。1661年開創ということはわたしが生まれる332年前。窓目くんにならって、今日のなかに332年が入り込む感覚を味わってみる。紅龍の背を歩くようにライトアップを堪能し、木魚の原型となった大きな大きな木製の魚もみた。のびる一日。帰りに師匠と近くの駅でビールを飲んでかえる。
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