オムロちゃん@ゆっくりレモン "魔性の子 十二国記" 2026年10月15日

魔性の子 十二国記
長い長い物語の入り口に、いま立ったばかりなのかもしれない。 まず驚いたのは、想像していた物語とまるで違ったことだ。ファンタジー作品だと聞いていたので、異世界での冒険を期待してページを開いた。ところが待っていたのは、シビアな学校生活だった。 物語の展開はとにかくスローだ。しかし文章は軽やかで、するすると読み進められる。ページ数の割に短かったな、というのが読後感だった。 作中ではあまりにも次々と人が死ぬ。人の死を扱う物語が苦手なので構わないのだが、その命の軽さから、この物語は人の死そのものに重きを置いていないのだという印象を受けた。 登場人物で印象に残ったのは、広瀬と十時だ。 広瀬は、最初は特に好きでも嫌いでもない、ニュートラルな主人公という印象だった。ところが後半になるにつれ、少しずつ人間っぽさがにじみ出てくる。最後には、ちゃんと嫌いになれるだけの女々しさまで詰め込まれていた。 一方の十時は、どこか裏がありそうに見えて、ずっと疑いながら読んでいた。ところが最後までただのいい人だった。疑ってすまん。 後藤のように最初から最後まで素直にいい人もいる中で、十時だけは勝手に警戒してしまっていた。 広瀬が濁っていく姿を見て、最後は高里が彼に失望して終わる物語なのかとも思った。 けれど、高里は麒麟という、人間とは別の存在だ。そこに人間の価値観を押し付けるのは違う気がした。 報復で命を落とした人以上に、麒麟がそこにいるだけで不幸になった人が多かった。そんな中で人のふりをして生きてきた高里は、自分が麒麟であることを思い出した瞬間に、きっぱりと割り切ったように見えた。 あの結末は失望ではなく、そういうことなのだと思う。 構成は、起承転結の起がとても長く、承・転・結が終盤に一気に詰め込まれている印象だ。正直、一冊の物語として見ると物足りなさは残る。 けれど、これはシリーズの一冊でもある。そう考えると、この本は壮大な物語のプロローグなのではないか? 恐ろしい沼地に足を踏み入れた気がした。
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