いぬい "ユートピア" 2026年10月12日

いぬい
いぬい
@inuiru
2026年10月12日
ユートピア
ユートピア
トマス・モア,
平井正穂
奥泉光『虚史のリズム』で、戦争で死んだ兵たちが帰る場所は「ない場所」ではなかろうか、と考えるシーンがあるんだけど、読み終わって(メモ書いて)しばらく経ったあとで「あ、ない場所ってユートピアのことか」と思った。 トマス・モアの描くユートピアは労働時間が六時間。メッチャいいじゃん、と思ったが、昼休みが二時間もあって、仕事のあとには「家庭の団欒」が義務づけられている。食事の前には年長者からのお話もある。服が粗末でみんなおなじ、というのは楽そうだが、許可なくひとりでぶらぶら散歩などしようものなら罪に問われる。便器が金でできているというのは笑った。外で政治の話をしたら死刑。きたない仕事は奴隷にやらせ、戦争は傭兵にやらせる。傭兵ならいくら死んでも却ってこの世のためになるからな、というわけである。マキァヴェッリが聞いたら怒るだろうな。 以下、切れ味鋭くて笑ったところ。 107p " 金というものは元来それ自体としては何の役にもたたないものである。にもかかわらず今日全世界の人々の間において非常に尊重されている。それも、元来なら人間によって、そうだ、人間が用いるからこそ、尊重されていたのに、今では逆に人間自体よりももっと尊重されている。なぜそうなのか、ユートピア人にはどうしても合点が行かないのである。木偶坊のような男で智慧といったら騾馬くらいしか持たないが、そのくせ悪いことや馬鹿げたことにかけては恐ろしく達者な男が、立派な賢い人をたくさんあたかも奴僕のごとくこき使えるというのも、もとはといえばこの金を山のようにもっているからの話である。(中略)しかしユートピア人がもっと不思議に思い、また軽蔑するのは、ただ金持ちであるというだけの話で、つまり、別にどうという理由もない、借金しているわけでもなければ使われているわけでもないのに、金持ちをまるで神様か何かのように崇拝する、あの人間の狂気沙汰である。ましていわんや、このけちん坊の金持ちが山のような財産の中から鐚一文、彼らが生きている間は金輪際、自分たちにくれる心配はないということを知って居るにおいてをやである。" 115p " 思うに、愚にもつかない尊敬をうけて得々とするのも、これまた同じような狂気の沙汰ではないだろうか。他人に脱帽をしてもらう、跪いてもらう、一体そこにどんな自然に湧き上る喜びがあり、真実な喜びがあるというのか。膝の疼みがとれ、頭の妄想が晴れるとでもいうのか。" 規則正しい生活を送る点では私はかなりユートピア向きと思われたが、ひとりの時間がないのは耐えられないので無理だな。ところで作者のトマス・モアも「ニュー・ビルディング」という名の離れを持っていて、そこによく引きこもっていたそうな。 私の考えたユートピアは…… 死刑禁止・奴隷禁止・サービス残業禁止・団欒の強制は禁止・食べる順番の強制は禁止・朝ごはんに甘いパンを食べるの禁止・食卓での喧嘩は禁止・餅とチョコレート、パンとアイスクリームの組みあわせ禁止 労働は一日六時間、週三日、おやつあり 揉めたらじゃんけん三回勝負、それでも気が済まなければラップを詠め なんか食のルールが多くなってウケた。これもだれかにとってはディストピアであろうな。
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