
楓
@kaede_tea
2026年10月18日
本と鍵の季節
米澤穂信
読み終わった
感想
図書委員シリーズ
再読しての感想や考えた事まとめ。
一話ずつ書いています。
第4話 「ない本」感想
※思いっきりネタバレしています。
※シリーズニ作「栞と嘘の季節」まで読んでの感想なので「栞と嘘の季節」のネタバレにも注意!
※腐向けっぽい表現があります。
(※引用のページ数は全て「本と鍵の季節」文庫版からです。)
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(長文です。)
主に2人の関係性に注目していつも感想を書いていますが、推理小説としてならばこの話が特にミステリーという小説の謎解きの味わいを私に感じさせてくれます。
ふたりが図書委員という設定が活かされているし
なおかつ言われてみれば……という感じがする謎解きが好き。
そしてそれだけで終わらない真相があって。
この話が今までと違うのは、今まではどちらかと言えば松倉が中心になって推理を行っていたのが
この話以降では堀川くんの視点がより大事になって来ているように感じる事。
それが2人の関係性が今までより対等に近づいた事を表しているような気もする。
この話がこの本の中では一番暗い話ですが……。
でもこの話で松倉が見せた図書委員としての矜持はその後の話にも重要な意味を持つし、私は松倉が先輩に対してあれだけ不機嫌だったのは図書室や堀川くんを守りたい気持ちが強かったからじゃないか?と思うんです。
後、松倉の依頼人への態度について堀川くんは
『松倉は温和な人間ではないかもしれないが、敢えて事を荒立てて喜ぶタイプでもないというのに、今日はどうも挑発的だ。』(p222)
と述べているけど、私なんかは堀川くんがこういう風に松倉の行動に違和感持っているのを読むと
「松倉が依頼人に厳しいのはいつもの事では?」と少しツッコミを入れてしまうんだけど😓(苦笑)
読者が読めるのは依頼人が図書室や堀川くんに妙な依頼を持って来ている時だけなので普段の図書委員松倉はもう少しスマートに物事を受け流したりできる奴なのかなと思う。
また、いつもなら2人で相談できる時間があるのに今回はそれがない。
『松倉がなにか言いたげな素振りを見せるけれど、この静けさのために長谷川先輩に声が届くことを恐れてか、黙ったまま歩いている。』(p214-215)
堀川くんは松倉が話したそうにしているのをちゃんと気づいてはいる。
けれど、何か理由をつけてふたりの時間を設けようとは特にしない。
それがなんとなく前回の話で、堀川くんのなかで松倉との関係に少し思うところが出てきてそれが今回の「相談はしない」という行動に出て来てしまったのでは……という深読みもできるのかも知れない。
一方で、堀川くんは
『松倉は気づいていただろうか。』(p233)
自分が何故、真相に気づいたのか、その根拠を述べていますが
このモノローグ、私には堀川くんが松倉に心の中で語りかけているようにも思えてしまうんですよね。
それは長谷川先輩の友人への想いに気づけたのは、堀川くんもまた松倉の事を大事な存在だと思っているから、
この真実に気づけたかのような―
次の「昔話を聞かせておくれよ」の語りの中で
『ーけっこう打ち明けた話をするようにもなった一方で、なんとなく踏み込めない壁、いや溝のようなものを感じていたのもたしかで、ー(以下省略)ー』(p279)
と述べられていますが、その事から、この「ない本」の話の時期は
堀川くんと松倉が図書委員の相方として過ごすうちに関係性が進んで来てそれによって前は見えなかった松倉と自分を隔てている「溝」のようなモノにも気づいてきて、そこからどう進んで良いのかわからなくなっている。
そんな時期にあった象徴的な出来事だったのかも知れないとも思います。

