
fuyunowaqs
@paajiiym
2025年4月13日

動物工場
ノヴァイオレット・ブラワヨ,
川副智子
読んだ
ジンバブエの史実を基にした、2022年ブッカー賞最終候補作。
さまざまな要素が散らかって騒々しく、はじめから終わりまで粗っぽい印象がぬぐえなかった。カタルシスを得られるはずの終盤の展開でさえ、急ごしらえで不自然だと感じてしまった。
ただ458ページからの「複雑な疑問、複雑な気持ち」はすばらしい章で、これを読むためにこの本に出会ったのだと確信して感謝した。ままならない家族の会話を正面から描いていて、母と娘が互いに内にも外にも何重にも被害者であり加害者でもあること、激しい怒りと深い恐怖に晒されつづける人生の疲労や戸惑いが伝わってきた。
邦訳版のタイトル『動物工場』について。
ジョージ・オーウェルの小説 "Animal Farm" を意識したものだろうが、原題の "Glory" を引き剥がしてわざわざ変えた意図がつかめなかった。
ジンバブエの女性作家が彼女自身の言葉でアフリカについて語ったフィクションなのに、その意義を軽んじて(作中の表現を借りれば、よりによって「白い動物」と同じ)イギリス人男性作家によるベストセラー作品のn番煎じにすぎないというレッテルを貼ってしまったのでは。

