動物工場

9件の記録
- fuyunowaqs@paajiiym2025年4月13日読んだジンバブエの史実を基にした、2022年ブッカー賞最終候補作。 さまざまな要素が散らかって騒々しく、はじめから終わりまで粗っぽい印象がぬぐえなかった。カタルシスを得られるはずの終盤の展開でさえ、急ごしらえで不自然だと感じてしまった。 ただ458ページからの「複雑な疑問、複雑な気持ち」はすばらしい章で、これを読むためにこの本に出会ったのだと確信して感謝した。ままならない家族の会話を正面から描いていて、母と娘が互いに内にも外にも何重にも被害者であり加害者でもあること、激しい怒りと深い恐怖に晒されつづける人生の疲労や戸惑いが伝わってきた。 邦訳版のタイトル『動物工場』について。 ジョージ・オーウェルの小説 "Animal Farm" を意識したものだろうが、原題の "Glory" を引き剥がしてわざわざ変えた意図がつかめなかった。 ジンバブエの女性作家が彼女自身の言葉でアフリカについて語ったフィクションなのに、その意義を軽んじて(作中の表現を借りれば、よりによって「白い動物」と同じ)イギリス人男性作家によるベストセラー作品のn番煎じにすぎないというレッテルを貼ってしまったのでは。
- fuyunowaqs@paajiiym2025年4月11日読んでる単調で飽きてきたのでとばし気味にページをめくっている。地の文でもセリフでも、同じ言葉をくり返す文体が裏目に出ているように感じる。"ダともうひとつダがつくジダダ"、"つまるところ"、"道ばたの小枝や石ころでさえ"、"正真正銘の事情通"……これらのフレーズをもう100回くらい見た気がする。 主要キャラクターの感情や内面に寄り添う物語ではないため、「動物の群れがただ騒いでるだけ」という印象になってしまっている。抑圧する側と耐乏する側がそれぞれ別のところで盛り上がっていて、階層を横断する交流も衝突もほとんど描かれない。これが意図的な構成だとしてもつらい。 以下171ページから引用。 "ただ、ときおり、いまのように過去の蓋がいきなり開くと、埋めたはずのものが埋められていない状態に戻る。そうして、その埋められていないものたちが彼の内にある眠れるハリケーンを呼び覚ます。つまるところ、過去が頭をまっすぐに起こして逆上し、荒れ狂う。過去を自分の内にとどめておくには最後の一オンスまで力を振り絞らなければならなかった。"
- fuyunowaqs@paajiiym2025年4月9日読んでる修辞の好みが合わず退屈な場面も少なくない……とはいえ数年待ち望んでいた邦訳だし、興味深いテーマを扱った作品なので諦めずに読んでいる。 冗漫さの目立つ文章だが、クーデターの報せを聞いたジダダ民の心の動きや受け止めかたの描写はリアルに感じられて胸を打たれた。100ページの「わたしたちの映画に主役はいない」以降、102ページまでの葛藤と混乱。 "つまるところ心か体のどこか深いところで、チャンスを奪われた、自分たちの物語から疎外されたと感じた。"