しょくぱん "ジェイムズ" 2026年10月24日

ジェイムズ
ジェイムズ
パーシヴァル・エヴェレット,
木原善彦
どこまでが原作エピソードかが気になって、書棚の片隅から「ハックルベリー・フィンの冒険」を探し出してパラパラめくりながら読んだのだけど、いま読むとハックもトムもまあまあ酷くてドン引きする結果となった。 黒人奴隷ジェイムズの視点から物語を追体験すると、奴隷制の残虐さ、グロテスクさがより際立つ。白人の気分次第で鞭打たれ、些細な疑いをかけられて吊るされ、愛する家族と引き離されて売られ、年端もいかないうちからレイプされる。しかもレイプされた奴隷は新たに奴隷となる子どもを産むので、所有者の白人にとってはビジネスとなるという悍ましさ。これだけの理不尽な目に合っても法的に守られることは一切ない。一国の中でこれほど酷い差別の歴史があるのだから、米国の分断が簡単には解決しないのは当然だと感じた。 物語に登場する白人たちは残酷で愚かで欺瞞に満ちているが、それは決して南北戦争以前の白人だけの問題ではない。私たちが生きているこの世界にもあらゆる差別が蔓延しているし、人は自分たちとは違うと見なした存在に対していくらでも酷いことができる生き物だ。そうしながら自分たちは正しく善良だと信じ続けることができる。おそらく私自身も置かれた状況によりそうなるんじゃないか、というか今すでに気づかぬうちにそうなっているんじゃないかと考えさせられる。 読者を安全圏に置いてくれない小説が好きなので、この本はよかった。
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