DN/HP "長い一日" 2026年10月24日

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2026年10月24日
長い一日
長い一日
滝口悠生
スーパーの精肉コーナーでスペアリブのパックを見ていたら、『長い一日』のなかで「夫」が語るスペアリブの話を思い出した。思い出したら当然読みたくなって、帰って文庫本のページを開いてみれば、ああ、やっぱりここも(そこに至るまでに語られるオオゼキの話や、テーブル代わりに使っている裁板の裏に墨書きされた立花茶話子さんの話も)良いよね、と思う。というか、この小説は何処もかしこも全部最高だなと改めて思っている。 今日みたいに生活のなかのふとした瞬間、出来事から小説のなかの様々なエピソードが思い出される、というのも凄くいい。気分が良くなってちょっと笑顔にもなって、肩の力が抜けてホッとする。助かる。そんな小説はこれからも大切に読んだり思い出したり、引いたり書いたりしていきたい。ちなみにスペアリブは買っていない。その調理のハードルは、わたしにはまだ少し高い、というかめんどくさいのだった。生活。 「たとえば料理店で、スペアリブって言って豚バラ肉を煮込んだのを出したらまずいよね、たぶん。豚バラ肉は豚バラ肉で角煮とか東坡肉とか、スペアリブではつくれない料理があるし。でも自宅だったらどうか。はい、そうです、私はときどき、スペアリブを煮るときとおんなじように豚バラ肉を煮ます。妻はどちらもよろこんで食べる。お肉が好きで、とろっと煮つけたようなものが好きで、東北生まれで濃い味が好きだから、私がつくれるもののなかでも特に好きな料理のひとつだと思う。妻はどちらの料理も、スペアリブ、と呼んでいて、今日はスペアリブだ嬉しい、などと言うのですが、ときにそれはスペアリブではなく、豚バラ肉の煮たやつなわけで、しかしよろこんでいるのにそんな細かい訂正をするのもなんだか水を差すようで、言い出せない。とはいえ、骨もないのに、スペアリブだと言って、騙くらかすようなことはしたくない。そんなわけで私としては、骨が付いているにせよ付いていないにせよもう全部豚肉と呼んでいます。骨付き肉を使っているときでも、骨付きの豚肉、と言うことはあっても、スペアリブとは言わないようにしている。……」
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