スペシャルティ "みんなこうして連帯してきた" 2026年10月26日

みんなこうして連帯してきた
みんなこうして連帯してきた
ジェイク・ホール,
安藤貴子
縦軸ではなく横軸の歴史(ヒストリーズ)を"連帯"として見出し、周縁化された歴史を描き出すという趣旨に共感はしたいんだけどちょっとなー、という感じがずっと続いて、正直自分には合わない本だったな。著者のナラティブ化志向がかなり強いので、現実のナラティブ化を嫌っているタイプには辛い。 本文で明示されてはいないけど、著者は最低でも民主社会主義、もしくはより左派の共産主義的な強い「党派性」を持っている。その党派性はいいとして、描かれている"連帯"の結論をその党派性に回収している節がある。「左派」という党派であることが"連帯"の証である("連帯"できないお前は「左派」ではない)、という排他性に近似しているのでは、という疑問を持った。TERFとSWERF(セックスワーカー排除的ラディカル・フェミニスト)をフェミニズムから外部化している点からもその様に思う。 TERFもSWERF も第二波フェミニズムから枝分かれした、つまりフェミニズム内部から産まれた差別思想だと自分は考えている。にもかかわらず、著者にとってフェミニズムは「左派」であり"連帯"の対象としている。しかし、TERFやSWERFは"連帯"の対象ではない。だからTERFもSWERFも「左派」ではないし、フェミニズムでもないという論調は都合の良い排他の様に思える。TERFやSWERFとも仲良く連帯しよう、と思っている訳ではないけども。 強いナラティブ化志向と党派性による回収は、周縁化された歴史の可視化よりむしろ「非主流の主流化」という歴史のヘゲモニー争いを目的としてるようにも思えた。ヘゲモニーを目的化すれば、それは新たな周縁化を産み出してしまうのでは?やっぱりちょっと乗れない。 あと、意識的か無意識的かは分からないけど明らかにアジア、アジア系は軽視・透明化されてますね。タイでの80〜90年代におけるセックスワーカーへのエイズ対策の先進事例について紹介されているが、日本含む先進国による買春行為によってタイを始め東南アジアがセックスワーク「先進国」となった側面への言及はない。その箇所以外にはアジアについて個別的に触れられていない。なにより、コロナ禍におけるアジアンヘイトに触れた箇所で個別事例として挙げられたのが黒人男性への事例のみだったのではっきりした。さすがにこの趣旨の本だと、連帯の中心は欧米なんですね、と嫌味の一つも言いたくなる。そもそもストーンウォール史観を軸にしているから、欧米中心主義的なんだけども。うーん、やっぱり乗れない。
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