
HIRU NE
@hirune
2025年4月14日

かなわない
植本一子
読み終わった
写真家・植本一子さんのWEBで公開していた日記からまとめられたもの。母親としての何気ない生活の連続が記される前半、母親の役割を一切振り切るかのように一人の仕事人・女性としての日々が描かれる後半。
そのあまりのコントラストにどういう心持ちで読み進めたらいいのかと動揺した。私自身は母にならない人生を選んだが、知りたい作りたい表現したいという得体の知れない欲が内からとめどなく湧き出る感覚、そしてそれに伴い家庭という自分が主体となって守るべき場所がおろそかになってゆくもどかしさも痛いほど理解している。
波風のない現状維持こそが求められる家庭と、変化と上昇が常に求められる仕事や自己実現。女性にとって、その方向のまるで違う2つを自分の中に同居させることはなかなかにしんどく、切り離すことができない。作中にもあった「私が普通のお母さんになれていたなら」という一文に思わず息を呑んだ。この“普通”が難しい人もいる。
淡々と綴られているのになぜだか最後まで目の離すことのできない、鋭く生々しいエッセイでした。
