
宮子
@miyako
2025年4月14日

愛なき世界(下)
三浦しをん
読み終わった
かつて読んだ
お気に入り
🌱再読。『愛なき世界』文庫版上巻の続き。すっかり松田研究室の顔馴染みとなった洋食屋見習い・藤丸と、そんな藤丸が恋する植物一筋な院生・本村。本村の実験の失敗も成功もそばで見届けた、藤丸の恋の行方は———。
長編小説かつ理系分野がさっぱりのため気軽に再読できていなかったのだが、読み返してやっぱり『愛なき世界』は私の好きな恋愛小説だなと感じた。五本の指に入る恋愛作品かも。本村の大事な子葉をデカパイ呼びする部分はあるものの(最終的に本村もそう呼んでいるが)、藤丸が本村を尊重しているからこそ、当初は研究モードになったら藤丸のことなど頭から消えていた本村が、実験中に藤丸を連想するまでになったんだろうなぁと思う。以前藤丸が本村さんは今こう思っているんだろうなと考えたシーンがあったが、後半で本村も藤丸さんは今こう考えているんだろうと思った描写が出てきて、お互い何を考えているかわかるようになるほど親しくなれたのだなと微笑ましくなった。
研究室の個性豊かな面々も好き。実験でとんでもないミスをしてしまいこのまま継続するかやり直すかを悩む本村に、指導者であり研究者でもある松田がかける言葉が良い。春になり家庭菜園でハーブを育てようと思っているので、緑の指を持つ加藤くんにも手伝ってほしいところ。あと多肉植物やサボテンも気になっているので色々と教えてほしい。
世の中の何かを解明するわけでもなく日々勤労と納税の義務をこなすくらいの私だが、本村の真っ直ぐに植物を愛するさまを読むと勇気のようなものをもらえる。私も私の好きを最後まで貫き通したい。