
サリュウ
@sly_notsry
2025年4月15日

A3(上)
森達也
読んでる
"「裁判員制度とか迅速化とか、現在法務省と最高裁が進めようとしている司法改革に、この裁判は大きな影響を与えます。これだけ大きな事件の二審がもしも二年以内に終わったなら、迅速化の大きな前例となりますよね。逆に言えば、この裁判が長引けば、法務省や最高裁にとっては、せっかく裁判迅速化法を成立させたのに、都合の悪い前例になるわけです。つまり裁判員制度導入のための地均しです。(後略)」"
p237
ヒトラーが自害してしまった戦後ドイツでは、ヒトラー不在のなかすべての経緯や動機、説明や責任の所在を調査し、今後の立て直しを行うしかなかった。しかしオウムに関しては、松本智津夫(麻原彰晃)は生きている(生きていた)。だからこそ、適切な医療を介入させ答弁のできる精神状態にしなければいけない(いけなかった)。しかし当時の最高裁側、検察側、あるいは被害者側、国民側、社会側はそれを徹底的に許さなかったし、オウム信者や松本智津夫の子息たちにはあらゆる憲法が無視され続けた……。ということが淡々と描かれつづけていて、その端正な筆致と徹底的な取材能力に畏れ入る。いろんな感情が湧き上がって目頭が熱くなる。結局なにもかもがわからないまま死刑が執行されたいま読むとなおのこと堪える。ほんとに、社会は、世界は、どうしてこんなことになってしまったのだろう。



サリュウ
@sly_notsry
当時、松本智津夫(麻原彰晃)の弁護団だった弁護士の面々は、適切な医療を拒まれ続け、真相がなにも明かされないまま出来レースの裁判に挑み続けて、それだけでなく社会からもバッシングを受け、攻撃され、無理解に晒され、さぞ無念だったことだろう。その忸怩たる思いが嫌というほど伝わってくる。