ありた
@ari_my
2025年4月16日

共感と距離感の練習
小沼理
読み終わった
明確に結論を下したり、主張を掲げたりせず、行きつ戻りつする思考を丁寧にひらいているエッセイ。その轍が見えるのが、文章を書くことのいいところに思える。
「すべて剥がしたはずの薄い膜も、少し他のことに気を取られているうちに元通りになる。(P142)」この感じはわたしにも覚えがある。目の前のやることに囚われてしまいがちだけど、地続きのところで起きている物事に目を向けて、少なくとも考え続けないといけないと思う。
最近読んだほかのエッセイは、著者と沈黙をはさみながらゆっくりとトスを送りあうような感じだった。このエッセイは、小沼さんの話を静かに聞いて、その帰り道にひとりで反芻しながら、今度会ったときに考えたことを伝えてみようと思うような感じ。あらためて、エッセイが好きだと思った。





