
ricochet
@ricochet
2025年4月17日

ノスタルジア
ミルチャ・カルタレスク,
住谷春也,
高野史緒
読み終わった
これは面白かった。変奏されるモチーフ、アレゴリー、有象無象のオブジェをちりばめながら、過剰な描写がメタ構造と回想と夢の重層的な迷宮を作り上げていく。描写の多さが特徴的な文章だが、入れ子構造というのがあちこちで仄めかされることもあり、詳細に書き込まれれば書き込まれるほど、世界は細密なミニチュアめいていく気がする。
中核をなす三つの中短編はどれも幼少期〜思春期の子供時代の終わりを描くが、その回想はあまりに原色かつ濃密で、先に進むにつれて世界のタガが外れていき、その秘密が曝け出される。それぞれの子供時代、楽園の終わりは性によってもたらされ、さらに他者との結合(あるいはこれもゲームなのかもしれない)の失敗により世界はあっけなく崩壊する。
しかし、車のクラクションからだって、また新たな銀河は生まれ得るのだ。ありがちと言えばありがちな構造ではあるけど、筆力に圧倒されるし、子供時代の終わりやノスタルジーというのは好きなテーマなのでとてもよかった。





