
米谷隆佑
@yoneryu_
2025年7月25日

大きな鳥にさらわれないよう
川上弘美
読み終わった
未来の人類史をテーマにこれほどやわらかく、心情のこもった作品があっただろうか。初めて受けた衝撃にしばらく身悶えした。
SF、というには硬派すぎて、とてもじゃないがこの小説を上手く分類する言葉があるとは思えない。一部分で硬派な科学の言葉を使うけど、会話調にするっと滑り込ませた程度の専門用語で咀嚼が難しくない。
コンピュータ科学と生物学の話に触れることがあっても、全てに既視感があり難しく感じさせない。それどころか、どこかで見たことのあるような景色、心理変化、そして聞いたことのない末路を見せられ、ぼくは巨大な鳥に監視されているかのように漠然と怖くなってしまう。神、かみ?なのかもしれない。信じたことのない神を、一度だけ信じてみるならこの「気配」から探っていきたい。

