DN/HP "未来散歩練習" 2025年3月6日

DN/HP
DN/HP
@DN_HP
2025年3月6日
未来散歩練習
未来散歩練習
パク・ソルメ,
斎藤真理子
この本を買った日、古本屋さんを出て駅に向かうと、ちょうどアクシデントで電車が動かなくなったところだった。その日はまだとても暑くて「また汗をかいてしまうな」と一瞬躊躇したけれど、乗り継ぎができる一つ先の駅まで歩くことにした。その道はたまに歩くのだけど、まだ日が高いうちにひとりで歩くのは新鮮な気がした。必要に迫られたそれは、どちらかというと散歩よりも移動という感じでもあったのだけど、それでもバタついた日々に不意に訪れた余裕のような時間には色々なことを考えていた。この本の中で「私」がそうするように、「私」やあなた、街の過去を思い、未来を想像し、現在を省みる。頭の中では同じようにそれらが重なったり繋がったり混じり合ったりしていた。少し新鮮に見えた街並みも眺めながら目的の駅にたどり着いて、電車に乗り込んで訳者あとがきから読み始めた。 ”今”というのはうまく定義ができないのだけれど、そのとき歩きながら頭の中で重なったり混じり合ったりしたもの、瞬間が単純ではない”今”と言えるのかもしれない、と小説を読み終わった後に考えている。小説も思考でも”今”をたしかに捉えることも、それを書き残すことは難しいけれど、整理されずに混沌としているそれを、そのまま、と思えるように書き残そうとしたのもこの小説のような気がしてきている。未来も過去も現在も含めた”今”を書いた小説。そんな小説が読みたかった、読めたと思った。 「本を読んで散歩しよう」とても印象的な一文を思い出す。この本のこともまたゆっくり歩きながら、たくさんのものが混じり合ったなかで考えたい。もうすぐ散歩のシーズンがくる。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved