
うみこ
@umico5
2025年4月22日

猫を棄てる 父親について語るとき
村上春樹,
高妍
読み終わった
村上春樹さんがお父さんについて書かれた文章。メッセージではなく、事実として書きたかったと書かれているように、淡々と子どもの頃の記憶やお父さんの戦争体験が語られる。戦争が一人の人生を変え形づくってしまい、その結果として春樹さんが生まれたという事実。そしてそれは世の中全体に言えるということ。「おそらく僕らはみんな、それぞれの世代の空気を吸い込み、その固有の重力を背負って生きていくしかないのだろう。」「そのときの海岸の海鳴りの音を、松の防風林を吹き抜ける風の香りを、僕は今でもはっきり思い出せる。そんなひとつひとつのささやかなものごとの限りない集積が、僕という人間をこれまでにかたち作ってきたのだ。」「しかしその一滴の雨水には、一滴の雨水なりの思いがある。一滴の雨水の歴史があり、それを受け継いでいくという一滴の雨水の責務がある。」短いので一瞬で読めてしまうのだけど、閉じてから戦争とそれがつくった人生について、考えずにはいられなかった。



