ユメ "炒飯狙撃手" 2025年4月19日

ユメ
ユメ
@yumeticmode
2025年4月19日
炒飯狙撃手
炒飯狙撃手
張國立,
玉田誠
『おすすめ文庫王国2025』に取り上げられていたり、ノンフィクション作家の高野秀行さんが紹介されていたりして気になっていた本。何より、タイトルがいい。実際に本を買ってから、原題は『THE SNIPER』なのだと知って驚く。翻訳の妙だ。主人公のひとりである凄腕スナイパー小艾の特技は炒飯を作ること。物語の合間で彼が腕を振るう炒飯がとても美味しそうで、食欲をそそられる。他にも台湾のローカルグルメが次々と登場するのが嬉しい。 組織の命令を受けて標的を射殺した小艾は、一転して何者かに命を狙われる身となる。一方、定年退職を間近に控えた刑事の老伍は、自分の追っていた連続不審死が小艾と繋がっていることに気付く。二人の人生が交錯するにつれ、背景にある陰謀が見えてきて——という台湾の謀略スリラー。読み慣れないジャンルだったので、初めは苦戦したのだが、小艾と老伍がそれぞれ事件の黒幕に迫っていく辺りからページを捲る手が止まらなくなった。「家」に囚われた者たちの悲哀が強く胸に迫り、本を閉じたあとも余韻がなかなか抜けない。「家」とは何だろうと考えさせられる。やや冷えこんでいた老伍と息子の関係が改善され、小艾と老伍の心がわずかに交わった象徴として炒飯が描かれるラストシーンがよかった。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved