ishiguro_reads "文にあたる" 2025年4月22日

文にあたる
文にあたる
牟田都子
若いころは「てにをは」を躍起になって直してより読みやすくしようとしていたが、ベテランの先輩からそうした細かい修正に大事な指摘が埋もれてしまうことを教わった話や、文章の拙さも含めて作者の個性を読者が受け取る機会を削いでしまってはいけないと思うようになった話が、なんだかちょっとグッとくる。  「かんなにかけたみたいにきれいにしちゃいけない」と。  どんなに経験を積んでも、何人で見ても、落とすときは落とす。校正される前の文章が世に出ることはないから「良い校正」というのは読者には存在しない。読んでいて誤植があると、散歩をしていて小石に蹴つまずいたような気持ちになる、と言われたことがあるという。転ばぬ先の杖としての仕事があることを知って、その誠実さに頭が下がる。
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