
JUMPEI AMANO
@Amanong2
2025年4月23日

権利の名のもとに
保井啓志
まだ読んでる
お風呂読書
第3章を読み終わる。章が進むにつれぐいぐい読まされてしまう。
3節。ユダヤ人が「国家を持つのに相応しくない堕落していて女性的でなよなよしたクィアな存在」として見做されてきた経緯を押さえつつ、それを跳ね返すために生まれたという「シオニズムの男性性の回復の系譜」が興味深い。
〈つまり、この筋肉的ユダヤ人の創出は、全く新たなユダヤ人の創出でもなければ、過去への回帰でもなく、[...]古代ユダヤの歴史のヒロイズムに基づきながら、ヨーロッパ近代主体に劣らない身体性の獲得を目指すものであった。〉(121-122頁)
〈「新しいユダヤ人」の創出の中でも、とりわけ身体的な鍛錬を通じた理想的な身体の獲得を重視するこの考え方は、入植を重視した実践的シオニズムの系譜に受け継がれていた。〉(122頁)
〈この新しいユダヤ人の身体と新しい国家は、ジェンダー化された男性的なものでもあり、退廃したディアスポラが女性的でなよなよしたものと理解されていたために、「健康で異性愛的な変形に必要な場」となった〉(124頁、プアの主張、これは4節で問い直される)
4節。リクード・プライドの団体ロゴに書かれている標語「イェシュ(〜がある)・ラハ/レハ(あなたには)・バイト(家)」の「バイト」に込められた3つの含意とその機能の分析、そこからの展開も面白い。
〈本節で示したデル・アヴィヴのピンク・トライアングルの事例やリクードのスローガンの事例では、人間としての尊厳を失ったユダヤ人と、人間としての尊厳を失った同性愛者が重ね合わされ、そのどちらも回復されるべき主体と措定されている。[...]シオニズムの語りは、男性性を求める単線的な語りではなく、むしろ被害者性と弱さをもそのまま受け入れ、包摂する両義的な語りであることが分かる。〉(133頁)
〈[...]プアのホモナショナリズム以降のイスラエルのジェンダー・セクショナリティ研究者らは、イスラエルの事例のうちホモナショナリズム的側面のみに焦点を合わせてきた傾向がある。[...]しかし、イスラエルの現在のSOGIをめぐる政治的状況を単にホモナショナリズム的であると片付けてしまうのは、やや性急と言わざるを得ない。なぜなら、[...]イスラエル土着のナショナリズムの一つであるシオニズムは、ユダヤ人がまずもって「ヨーロッパの他者」として規定されてきた歴史性を出発点としているからである。[...]この[...]歴史的固有性こそが、性的少数者の権利擁護に関する二つの両義的な語りを生み出している。〉(134頁)
次章からはいよいよ「Ⅱ 動物の政治」に突入。