
ユメ
@yumeticmode
2025年4月23日

カフネ
阿部暁子
読み終わった
心に残る一節
感想
この本と出会えてよかったと思わせてくれる、優しく温かい物語だった。料理を通して人の心が救われたり、誰かと心の距離が近づいたりする様が丁寧に描かれていて、登場するメニューの描写はどれもとても美味しそう。味だけでなく、視覚に訴えかけてくる色彩の美しさまで綴られていたり、食べる瞬間の心のときめきまで伝えてくれたりする文章に惚れ惚れしながら読み進めていたら、それらにも重要な意味があったことが判明して感嘆に震えた。
「未来は暗いかもしれないけど、卵と牛乳と砂糖は、よっぽどのことがない限り世界から消えることはない。あなたは、あなたとお母さんのプリンを、自分の力でいつだって作れる」という台詞が心に残っている。誰かに美味しいものを食べさせたいと願うのは、紛れもなく愛情なのだろうと思う。そして、愛の形は様々だ。人が誰かと一緒に生きてゆく、その在り方だって色んな形があるのだと教えてくれるラストに、深く胸を打たれた。


