
柴犬
@storyseller
2025年4月29日

始まりの木
夏川草介
読み終わった
「金銭的な豊かさと引き換えに、精神はかつてないほど貧しくなっている。私には、この国は、頼るべき指針を失い、守るべき約束事もなく、ただ膨張する自我と抑え込まれた不安の中でもだえているように見える。精神的極貧状態とでも言うべき時代
だ」
"亡びるね”
にわかに脳裏に、老住職のそんな言葉が響いた。と同時に、あの黒々とした輪照寺の桜がゆったりと揺れる景色が見えた。
「どうすればこの貧しさから脱出できるのか、誰かが考えなければいけないが、かってこの道に向き合ったはずの多くの学問が、今はことごとく目を逸らしているように見える。神学は過去の遺物となり、医学は科学の幾兵に成り果て、哲学は言語ゲームに興じ、文学は露悪趣味に堕している」


