始まりの木

3件の記録
- 柴犬@storyseller2025年4月29日読み終わった「金銭的な豊かさと引き換えに、精神はかつてないほど貧しくなっている。私には、この国は、頼るべき指針を失い、守るべき約束事もなく、ただ膨張する自我と抑え込まれた不安の中でもだえているように見える。精神的極貧状態とでも言うべき時代 だ」 "亡びるね” にわかに脳裏に、老住職のそんな言葉が響いた。と同時に、あの黒々とした輪照寺の桜がゆったりと揺れる景色が見えた。 「どうすればこの貧しさから脱出できるのか、誰かが考えなければいけないが、かってこの道に向き合ったはずの多くの学問が、今はことごとく目を逸らしているように見える。神学は過去の遺物となり、医学は科学の幾兵に成り果て、哲学は言語ゲームに興じ、文学は露悪趣味に堕している」
- 柴犬@storyseller2025年4月29日🌀忙しすぎて本を読む暇がないのである。これは最近の本離れにおいてよく聞く言葉である。しかしこれには語弊があるなと思う。厳密に言えば、スマホをいじり、ネットサーフィンをする時間はあるのである。ただ、本を開いてその世界に没頭するまでの時間がないのだ。精神の余裕がない。この時代に、必要なものを教えてくれるような温かな本であった。夏川草介の本はいつも、私たちに温もりを与えてくれる。そして、忘れてしまいそうな大切なことを教えてくれる。 好きな一節で、“日本の神には、大陸の神に見られるような戒律も儀式もない。教会もモスクも持たない。それゆえ、都市化とともにその憑代である巨岩や巨木を失えば、神々は、その名残りさえ残さず消滅していくことになる。ニーチェは「神は死んだ」と告げたが、その死に自覚さえ持たなかったという点で、欧米人より日本人にとっての方がはるかに深刻な死であったと言えるかもしれない”というものがあった。神の自覚。最近の言葉で言えば“スピっている”ということになるが、八百万の神、どこにでも何にでも神がいると言う日本の考えは大切にすべきことだとおもった。