
シクロ
@sicrobei
2025年5月1日

語学の天才まで1億光年
高野秀行
読み終わった
幻の怪獣やアヘン栽培の一大拠点といった様々な秘境の冒険の裏にあるもう一つの冒険"言語習得"の話。言語習得自体が壮大で魔法のような冒険。
探検とアイデンティティクライシスの話が面白い。代替可能な存在にならないために、木登りが出来るとか語学が出来るを拠り所にする。仲良くなるための現地の言葉ってのは自分にも経験があって、台湾に旅行に行った時、家族経営の宿に泊まった。たまたま祝日の日で、一緒にバーベキュー食べないかと誘ってもらった。その時、これ食べてみって言われて食べたのがめちゃくちゃ辛くて、「很辣〜(とても辛い)」って言ったらとても笑ってもらった。第二外国語で中国語やってて良かった。言語(と食べ物)ってすごいなと思った。一方で、仲良くなり過ぎてしまう、舐められるという弊害があるっていうのは盲点だった。長く現地にいるからこそ分かる視点だ。
"これはペンです"という日本語を話すことはないってことなどよく考えたら分かるのに、語学を学ぶことや外国語として話すということはそういうことなのかなと思ってしまっていた。高野さんの中国語の先生が言うところの地道的中国話(リアルな中国語での会話)、単語・言い回し・語気・あるいは気質も含んだ習得って、ただ覚えるのとは違って、ある規則性に気づいた時の閃きのような頭の喜びと、気持ちを分け合える体で感じる喜びがあるのだろう。
標準語と方言の間にヒエラルキーが生じることが面白かった。
言語の美しさをフィギュアスケートになぞらえていた。全てが連なった滑らかな美しさ。高野さんは例えが上手い。
日本で過ごしていて感じるのとは違う、言語感、民族感、そして世界があるんだな。

