
みくら
@mikura727
2025年4月25日

名探偵の有害性
桜庭一樹
読み終わった
法権力の埒外で事件を解決&犯人を断罪する『名探偵』が社会現象と化したifの世界線の物語。それだけでも設定としては面白いのに、この小説の舞台は1970年代の「名探偵ブーム」が遠く過ぎ去った令和!当時爆発的な人気を得た「探偵と助手」の二人は50代の、それぞれ家庭を持つ中年だが、令和の目線から「名探偵の有害性」を告発するというYouTuberに取り上げられたことをきっかけに、自分たちの過去と向き合うことに。
「名探偵」というキャッチーなフックを用いながらもこの作品のテーマは、価値観をアップデートできるか、過去の行いについて「自分は間違っていた」と客観的に受け入れることができるか。ということなんだろうなあと思う。
安易な「あの頃は良かった」ではなく、「でも、あれはやっぱりダメだった」「時代が悪かったけど自分も悪かった」と冷静に過去を分析して今の自分に繋げていけるか。
そういう意味で、かつて"時代の雰囲気"によって「おとなしくて従順な探偵助手」という役割に縛られていた主人公が、過去のパートナー(探偵)とも元夫とも離別して新たな道を進むラストは爽快感があってとても良かったです。




