さみ
@futatabi
2025年5月2日

密航のち洗濯
宋恵媛,
望月優大,
田川基成
読んでる
1章の手前まで、いったん書きのこしておきたい
知らない話だ、と思った。そもそも他人のことで知っている話なんてないはずだけど、それ以上に、こういう状況にあった人々の存在自体を今のわたしは知らなかった。いや、想像はできたのにしてこなかったと言う方がしっくりくるかも。自分自身の、今足をつけている地面の、捉え方の問題。
「日本はかつて植民地化で一方的に「大日本帝国民」とみなした人々を、またもや一方的に「外国人」とみなした。そして、たとえ生き延びる術を求めて日本に戻ってきた人々であっても、日本にいてはならない「イリーガルな存在」として、追い出し得るし追い出すべき「密航者」として、印をつけて、炙り出そうとした」
学校で教わった歴史をちゃんと一つずつたしかめていけばこの通りの理解にたどり着くはず。でも、そういう教わり方をしなかったのはたしかで、そしてそのままで何ら不自由を感じずにここまで過ごしてきてしまった。序盤のこの節だけで、自分の中のもやもやとしたイメージ(理解のなさに対する罪悪感とかそれでもちゃんと調べてこなかったこととか)などがいっきにクリアになった。……と思っていたところで、こんな一節も。
「当時の地元紙が伝えた下関の様子と、尹紫遠が描いたシーンはとてもよく似ている。だが、当時の新聞をつぶさに読んでも、「密航者」たち自身の言葉はそこに存在しない。私が今、1946年について得られる情報は決してニュートラルではない。(…)だからこそ、尹紫遠が書いた意味は大きい。「密航者」として対象化された人々自身はそのとき何を感じていたのか。何を思っていたのか」
何かを知るって簡単なことではないなと改めて。今はこの本と綴られたことばを借りて、知らなかったひとつの事実をたしかめていきたい。



