橋本吉央 "ポトスライムの舟" 2025年5月3日

ポトスライムの舟
「抑制の効いた文体」という表現があったが、なるほどなあと思った。文体もそうだし、物語として起こることも身の回りで破天荒さがあまりない。考えが変わるきっかけになったのが、自転車のブレーキパーツを盗まれて事故にあいそうになった、というエピソードで、それもなんとも、劇的でない感じがあって、とても身近感がある。 淡々とした文体でありつつ、テンポがよく、会話・プロットが進む部分と語り手が内省する部分のバランスがうまいように感じた。 作品としてのメッセージとしては、そこまで自分には刺さらなかったけれど、いわゆる就職氷河期世代的な、快適な環境で働くことの難しさみたいなものに対して、腐すでもなく、激するでもなく、絶望するでもなく、できることを淡々と模索する感じが印象的だった。
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