あんどん書房 "コミケへの聖歌" 2025年5月2日

コミケへの聖歌
SFマガジンを読んでる知人が良いよーって言ってたので読みました。 文明が終末を迎え、その後旧文明の様々な遺物が破壊された暗黒期を経た現代。自給自足の村「イリス沢」で暮らす女子四人は民家に残された漫画にハマり、部室を作る。やがて彼女らは漫画の聖地〈コミケ〉への遠征を夢見始め…… というようなあらすじから血湧き肉躍る冒険小説が始まるかと思っていたのだが、物語の焦点はイリス沢内での社会構造と格差に向かっていった。終末日常的友情部活ものかと思いきや、意外とヘビーなところに切り込んだ。まあSFって批評性が大事なのかもしれないし。 中頃まできたら結末はページ数的に想像できたけど、終盤に出てくる中島敦ばりの格調高い文体によるSF譚は読み応えがあった。タイトルとカバー画で手に取った読者は置いてきぼりにされそうだけど…(中盤ぐらいでもう置いてかれてるか)。 個人的にはもうちょっと「マンガ」である必要性みたいなところを見たかった。全体としてテーマは「人間にとって文化は必要である」ってことだと思うけど(禁書とか弾圧とか何度も出てくるし)、マンガとかコミケをあえて全面に出すにしては動機が弱い気がした。 何より「部活」ってフォーマットを持ってくるのであれば、創作活動を通して何がしか打ち破るとか成長するとか、そういうのを求めてしまう。それこそ類型にはなってしまうが。
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