コミケへの聖歌

17件の記録
- あんどん書房@andn2025年5月2日読み終わったSFマガジンを読んでる知人が良いよーって言ってたので読みました。 文明が終末を迎え、その後旧文明の様々な遺物が破壊された暗黒期を経た現代。自給自足の村「イリス沢」で暮らす女子四人は民家に残された漫画にハマり、部室を作る。やがて彼女らは漫画の聖地〈コミケ〉への遠征を夢見始め…… というようなあらすじから血湧き肉躍る冒険小説が始まるかと思っていたのだが、物語の焦点はイリス沢内での社会構造と格差に向かっていった。終末日常的友情部活ものかと思いきや、意外とヘビーなところに切り込んだ。まあSFって批評性が大事なのかもしれないし。 中頃まできたら結末はページ数的に想像できたけど、終盤に出てくる中島敦ばりの格調高い文体によるSF譚は読み応えがあった。タイトルとカバー画で手に取った読者は置いてきぼりにされそうだけど…(中盤ぐらいでもう置いてかれてるか)。 個人的にはもうちょっと「マンガ」である必要性みたいなところを見たかった。全体としてテーマは「人間にとって文化は必要である」ってことだと思うけど(禁書とか弾圧とか何度も出てくるし)、マンガとかコミケをあえて全面に出すにしては動機が弱い気がした。 何より「部活」ってフォーマットを持ってくるのであれば、創作活動を通して何がしか打ち破るとか成長するとか、そういうのを求めてしまう。それこそ類型にはなってしまうが。
- イイヤン@h_d_d2025年4月14日読み終わった文明が崩壊してから数世代経った頃の日本で、田舎の女の子たちが旧世代のマンガに憧れて自分たちで同人誌を作って、廃墟となった東京では自分たちと同じようにマンガ好きが集まって今でもコミケをしてるかもしれないと思う話。 生き残るのもやっとのときに文化を残したりすがることが本当にいいことなのか、システムの一部となってしまっていることを変えることの是非、そんな世界でマンガはどんな価値を持つのか、みたいな。 いちばん心に残ったのは、学校なんてとっくになくなってしまいどんなものかも知らない女の子たちがマンガで見た部活に憧れて、ほったて小屋の中に漫研の部室を再現して、そこでマンガを描いているという風景。カバーイラストで描かれているこの景色を、文明崩壊世界で彼女たちが自分たちで作ったのだと考えると、胸がいっぱいになります。
- ハヤ@hayaya2025年3月20日読み終わったはじめて体験するはずなのに、遠い昔に全く同じ出来事を経験したことがあるような。あのとき選ばなかった道を辿った自分がいるような。数ページにも満たない回想シーン(?)が圧巻。
- 七瀬由惟/Yui Nanase/あーしぇ@ashe_dalmasca2025年3月9日読み終わったポストアポカリプスものなのに、そこまでの深刻さを感じさせないのは、4人のヲタク女子たちのキャッキャウフフが、まずはあるからなのかしら。 旧文明のマンガ、アニメ、コミケに対する4人の解像度(部分的に高かったり、低かったり)と、災厄後の世界観がややちぐはぐな気がする。 各人の出自の違いが生み出す互いへの反感と自身の内省が描かれる場面では、先日読み終わった『バベル』の4人を即座に思い出した。 作中ではフィクションだと言い逃れているが、きっと作者の言いたい世界観が、作中後半のある人物の備忘録に濃縮されているのだろう。だとしたら、彼女たちがこの因習から放たれ、コミケへ向かう動機が弱すぎる気がする。 あ、つい評者視点になりましたが、SFならば、どちらかに振れてしまったほうがよいように思いました。
- こうへい@nyanyanya2025年3月8日読み終わったタイトルと設定読んだ時点で気になってたけど、期待以上に社会派の内容だった。ポストアポカリプスの村を舞台に、その独立を書く。しかも今と全く異なる社会を書いてるようで、少なくとも自分はアニメリアタイしたかったり、本屋さんが遠いのが嫌で東京来たので、リアルな話でもあるなっておもった