
白粉
@00_neumond
2025年5月4日

氷柱の声
くどうれいん
読み終わった
どんな言葉で感想を述べても陳腐な言葉に聞こえる気がする。
震災のことを今まで語れなかった、とあとがきで述べているが、書きたいと思ったきっかけが編集部の声かけのタイミングだったことはあまりにできすぎというか、都合のいいタイミングでそう思ったものだな、と正直感じてしまう。
作中には震災を経験しそれを糧にして作った作品が最優秀賞をを獲る描写に対し筆者は懐疑的な視線を向けるが、この著書自体が芥川賞候補になっていることも「震災」を題材にしたものではないか、と感じる。自らが否定的に描いたものと全く同じ状況に置かれている、まさにブーメランとはこのことである。
くどうさん自身も候補に選ばれて苦しかったと吐露していた記憶がある。
あの時のことを書けなかった、それでも書こうとした彼女の意思は尊いものだと思うし、この手の作品でよくある「希望の子」として苦境から立ち上がる主人公、というベタなものとは一線を画した作品が、多くの人に触れる機会が生まれたのは事実であると感じた。