gn8tea "資本主義の次に来る世界" 2024年3月24日

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2024年3月24日
資本主義の次に来る世界
資本主義の次に来る世界
ジェイソン・ヒッケル,
野中香方子
「1350年から1500年までの革命の時代、上流階級は歴史家が「慢性的な非蓄積」と呼ぶ危機に見舞われた。国民所得(全国民が得る所得の総額)がより均等に国民に分配されるようになるにつれて、上流階級が封建制のもとで享受していた富の蓄積は難しくなった。ここが肝心なところだ。わたしたちは、資本主義は封建制の崩壊から自然に出現したと考えがちだが、そのような移行は起きなかった。資本主義は上流階級による富の蓄積、つまり大規模な投資のために富を過剰に溜め込むことを必要とする。しかし封建制が崩れた後に生まれた平等主義の社会は、自給自足、高賃金、草の根民主主義、資源の共同管理を軸とし、上流階級による富の蓄積を阻んだ。上流階級の不満の核心はそこにあった。 この平等主義の社会が、その後どのように発展していったかを、わたしたちは知り得ない。なぜなら、容赦なく潰されたからだ。貴族、教会、中産階級の商人は団結し、農民の自治を終わらせ、賃金を引き下げようとした。もっとも、そのために小作農を再び農奴にしたわけではない──そうすることは不可能だとわかっていた。その代わりに、ヨーロッパ全土で暴力的な立ち退き作戦を展開し、小作農を土地から追い出した。農民が共同管理していたコモンズ、すなわち、牧草地、森林、川は柵で囲われ、上流階級に私有化された。つまり、私有財産になったのだ。 このプロセスは、囲い込みと呼ばれる。囲い込みによって、数千もの農村コミュニティが破壊された。作物は荒らされ、焼かれ、村全体が破壊された。農民は、生きるために欠かせない資源である土地、森、獲物、木材、魚に近づけなくなった。また、その改革は「所領没収」に拍車をかけた。イギリスやアイルランドではカトリック修道院が解体され、その土地はすぐさま貴族に払い下げられ、そこに暮らしていた人々は立ち退きを強いられた。 (中略) もっとも、資本主義が台頭するにはもう一つ必要なものがあった。労働である。それも大量の安い労働だ。囲い込みはこの問題も解決した。自給自足経済が破綻し、コモンズが囲われると、人々は賃金を得るために労働力を売るしかなくなった。以前のように臨時収入を得るためではなく、農奴制の時のように領主の要求を満たすためでもなく、ただ生き延びるために。要するに彼らは賃金労働者(プロレタリア)になったのだ。世界史上、前例のないことだった。当時、彼らは「自由労働者」と呼ばれたが、この言葉は誤解を招く。彼らは奴隷や農奴のように働くことを強制されたわけではないが、選択の余地はほとんどなく、働かなければ飢えるしかなかった。生産手段を所有する者が、最低賃金を払えばよいとされるのであれば、人々はそれを受け入れるしかない。どれほど少ない賃金でも、死ぬよりましだった。」 「資本主義は並外れた物質的生産性をもたらしたが、その歴史が絶え間ない希少性の創出を特徴とし、破壊的な飢饉と数百年に及ぶ貧困化のプロセスにまみれているのは、なんと奇妙なことだろう。この明らかな矛盾に最初に気づいたのは、第8代ローダーデール伯爵ジェームズ・メイトランドで、1804年のことだった。メイトランドは、「私富」と「公富」すなわちコモンズには負の相関があり、前者の増加は後者の犠牲の上にのみ成り立つ、と指摘した。 メイトランドはこう書いている。「公富は、人が、自分にとって有用で望ましいと感じ、欲するすべてのものから成る、と定義できるだろう」。言い換えれば、豊富にあっても固有の価値を持つもので、空気、水、食料が含まれる。私富も、「人が、自分にとって有用で望ましいと感じ、欲するすべてのものから成るが、こちらは希少性ゆえに価値を持つ」。希少であればあるほど、それを必要とする人々からより多くの金を強奪できる。たとえば水のように豊富な資源を囲い込んで独占したら、人々に使用料を請求して、私富を増やすことができる。(中略)しかし私富を増やすには、豊富にある無料のものを利用する権利を人々から奪う必要がある。結果、私富は増えるが、公富は減る。 (中略) メイトランドは、植民地でそうしたことが起きているのを知っていた。たとえば果実やナッツが実る天然の果樹園を入植者が焼き払ったため、その土地の豊かさに依存して暮らしていた人々は、働いて賃金を得て、ヨーロッパ人から食物を買わなければならなくなった。植民地政府が私富を増やすには、豊富にあるものを希少にしなければならなかった。その典型は、イギリス領インド帝国がインドに課した塩税だろう。インドでは、塩は海岸で自由に手に入れることができた。腰をかがめて海水をすくいとればよいのだ。しかし、イギリスはこれを行う権利を人々に買わせて、植民地政府の歳入を増やした。私富を増やすには公富を犠牲にする必要があった。コモンズは成長のために破壊されたのだ。」
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