
本屋lighthouse
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2025年5月5日

ジョゼフ・コーネル 箱の中のユートピア
デボラ・ソロモン,
太田泰人,
林寿美,
近藤学
読んでる
まだ読んでる
一九四二年ほどアメリカ美術が活況を呈した年も稀だった。ひとつには、立役者たちがアメリカ人ではなかったという事情がある。主役だったのはむしろ、このころニューヨークにたどりついたヨーロッパ人たちだった。フランスの敗北後、芸術家や知識人たちが大挙して祖国を逃れてきていた。(p.171)
国外に逃げられるだけの地位や財産などがあるということ、そしてアメリカもまた戦争当事国であるにもかかわらず逃げ場にできたということ、そして戦争中でも芸術界が賑わっていたということ、などなどにあらためて日本の状況との差を感じる。「三巨頭――ピカソ、ミロ、マティス――はヨーロッパにとどまり、名声に守られて安全に暮らしていた」(同)という事実もまた、安全が確保される者とそうではない者の隔絶を突きつけられる。偉くなれば生き残りやすくなるこの世界のシステムは明確に倫理的ではないが、それを転覆させる方法がわからない。






