村崎 "救われてんじゃねえよ" 2025年5月4日

村崎
@mrskntk
2025年5月4日
救われてんじゃねえよ
難病を抱える母、金遣いが荒くだらしない父、「ヤングケアラー」の沙智。 表層だけを見ると、不幸や同情、つらい、心配、そんな言葉がつい過ってしまうけれど、そんな言葉を口にした瞬間、たぶん「殺傷能力の高い文章」に刺されてしまうんでしょう。 沙智の環境は重く受け止められがちで、いや社会全体で重く受け止めることなんだけど、でも彼女を取り巻く一つひとつ、すべてが不幸なわけじゃない(当然だけど)。くだらなくて、おもしろくて笑うというのは、どんな状況でいても等しい行為だと思う。 表題作「救われてんじゃねえよ」「泣いてんじゃねえよ」「縋ってんじゃねえよ」どれも画面を通して見る、見せる/見られるという構図があり、この「見る」という行動が沙智の成長によって少しずつ視点が変わっていく構成がとてもいいなと思った。立場が変化して、受け取る言葉や自分自身に対しても沙智が見ることができているのかなと思った。 そして読み手は傍観よりももっと近しいところで「見る」ことができる気がする。 突き刺してくる作品なのは間違いないのだけど、ただ尖っているだけじゃなくて、ふっとやわらかい部分もある。 家族の駄目な部分も好きだった部分も忘れていく部分も、内向的ではなくぜんぶ外に向かっているから、きっとこの作品にはパワーがあるのだと思った。 読み終わってから自分自身にも返ってくると思う、「救われてんじゃねえよ」。この作品が読まれることでもまた、変化していくものがあると思います。
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