
haku
@itllme
2024年11月13日

心淋し川
西條奈加
かつて読んだ
どの短編の結末も忘れられないものばっかり。
結ばれない恋も結ばれないと思ったら結ばれた恋も。
江戸時代の小さな街を舞台に描かれてるけれど読み進んでいくと最初は言葉が難しいと思っていたけれどどんどん街の風景が頭の中で広がって人と人が繋がっていった。
読み終わった今では心町(うらまち)が心の中であったかいまま留まってくれてる。
心町では絶対に人の過去や淀みを聞かないことが言葉にはせぬルールになってることがまた、読者の私をも受け入れてくれているように感じた。
「冬虫夏草」では1人息子に依存していく母の姿が描かれてる。
でもそれは自分が嫁いだ旦那が過去に自分の母親にしている姿と同じだった。
母親が語り手となってるからか、読みながら苛々した。けれど、自分の気持ちにも気づかないくらい拠り所がそこしかないのだと可哀想にもなった。
寂しいんだなと。
それは
「明けぬ里」
ででてくる売れっ子の遊女も。
してはいけぬ恋を、でもどんな相手もよりも自分が心を寄せてる相手とした。
最後、全てを悟って葛藤(クズノハ)の泣き叫ぶ姿には明里の姿とともに喪失感を与えられた。
そして「灰の男」
ずっと、心町のことを見つめてきた茂十の過去。寂しさを晴らしたくて過ごしていたのにそばにいた楡爺との最後の結末は、
誰しも寂しさを持たずには生きることができないんじゃないかとさえ思わせた。
どのお話も人の心にある拠り所みたいな淋しさが滲み出てた。
淋しさって拠り所になることがあるのかな
読み終わった今でも彼等の心のうちをもう1度覗きたくなる。