
haku
@itllme
2024年11月27日

対岸の彼女
角田光代
かつて読んだ
話しのあらすじも思いつかないまま読み始めた1冊。
小夜子と葵の出会いとそれぞれの過去が描かれる。
印象に残ってるのは、まるで自分も一緒に追いかけていたような気持ちになった葵の高校生の頃のナナコとの話し。
学校では話さないのに帰りの川辺で集まって語り合い、夏休みに山奥の民宿にアルバイトに行ったり、2人で家出して歩き回ったり。2人で手を繋いで飛び降りた描写はなぜだかそれが必然で美しいものに見えた気がした。
大事なものなどないというナナコはいつまで経っても追いかけたくなるような人だった。どうしても自分自身を葵と重ね合わせてしまう。
葵の今の生き方はまるで高校時代のナナコがいるようだった。それは私も同じなのかもしれないと思った。
小夜子とその子どものあかり。
同じような逃げ場探していた小夜子
1人でいることを選んでしまうあかり
事件として取り上げられた葵とナナコの逃避は2人特有のものなんかではない。
ただの同性愛でもない。
みんな一緒に逃避をしようと自分の手を握ってくれる人を探している。
ただそれができるのは相手がいる人だけで、その手を掴んで川を渡らなければならない。
友情も逃避も孤独も
どれかを一度でも選んだことがあるならこの作品は流れるように心に入ってくると思った。
「ひとりでいるのが怖くなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね」
葵は小夜子にそういった。
いつか私も伝えたい。そう思わせてくれた友人にありがとうと。
角田さんの作品は好きだと思う。