
ユメ
@yumeticmode
2025年5月6日

人よ、花よ、上
今村翔吾
読み終わった
感想
英傑を描いた物語は数あれど、「英傑の子」を主役に据えた物語は珍しい。本書の主人公は、楠木多聞丸正行。あの楠木正成の長男だ。
「英傑の子」として生きる道を敷かれることへの苦悩や反発が手に取るように描かれ、平和を志す多聞丸が下す大きな決断に、どうかその企みが実るようにと願わずにはいられない。弟や従兄弟たちとの日々には青春という言葉も似合うように感じられるからこそ、彼の「皆で生き延びたい」という願いがいっそう切なるものとして胸に響く。
「桜井の別れ」で正成が語った言葉にも感銘を受けた。今村さんの歴史小説には、「史実がこうであったらよいのに」と思わされる、抜群の面白さとひとの心を揺さぶる力がある。


