催眠性蓄音機 "プロジェクト・ヘイル・メアリ..." 2025年5月8日

プロジェクト・ヘイル・メアリー 下
プロジェクト・ヘイル・メアリー 下
アンディ・ウィアー,
小野田和子,
鷲尾直広
少し前に読み終わった。感想はたくさんある...とりあえず、ロッキーが好きすぎる。audibleで聴いた母は「ロッキーのしゃべりがとてもかわいい」と言っていたので、オーディオブックの方も気になるし、英語版のロッキーの口調がどうなっているのかも気になる。 たしか下巻の途中だったと思うけど、「人間やエリディアンの個体が、他者のために命を投げ出すのはなぜだろう」と二人で議論した時があった。その時のグレースは、「種の保存のためだろう」というような回答をしたと思うし、実際社会心理学でも互恵性利他行動の文脈でそう言われていた気がする。 でも最終的にグレースは、行ったこともない星の義理のない種族のために命を投げ出そうとした。多分それは、それが親友ロッキーの願いだからというのと、ロッキーを通してエリディアン全体にも感情移入したからなんだろう...。 ではそれは、生物の機構としてはなぜなのか。本来種(人間)の保存のためだったはずの機能の誤作動か、はたまたエリディアンと人間は祖先を同じくしているという仮説が正しくて、そのためなのか。もしくは、「種の保存」とは違う理由があるのか...... そしてグレースについて。「なぜ我々は命を投げ出すのか」の会話で、ロッキーは「我々はきっといい人たち」と言ったが、グレースは任務を言い渡された時命を最後まで嫌がっていたわけで、それを思い出したグレースは「ロッキーと違い、自分はいい人ではない」と思ったかもしれないなと考えたりした。 でも、グレースは非常に「英雄的でない、平均的『善人』」だなと思う。ストラットにも「あなたは基本的に善人なのよ」と言われていたが... 自分から死にに行く任務に志願はしないし、絶対死にたくなくて最後まで抵抗するけど、いざ確定したら全人類の命を見捨てて反逆するほどの根性と悪意は持てず、死にたくないと怯えながらも使命は全うしようとする。そして親友の命が自分の手が届く範囲で失われるとなれば、命を捨てることができる......これは本当に、英雄ではない「平均的善人」だなぁと思わされる。でもこの時代のこの世において、平均的善人は素晴らしく偉大だ...。
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