ユメ "人よ、花よ、下" 2025年5月8日

ユメ
ユメ
@yumeticmode
2025年5月8日
人よ、花よ、下
父・正成を死に追いやった張本人とも言える坊門清忠。その子・親忠と邂逅を果たした多聞丸が、徐々にわだかまりを解き、平和を実現させるべく道なき道を切り拓くのを助け合う姿に胸が熱くなる。元来さほど気の強くないであろう親忠が多勢に無勢の中で勇気を振り絞るのに、何度となく想いが込み上げた。 そして、後村上天皇との出会いもまた、多聞丸にとって、否、お互いにとってかけがえのないものだった。共に「英傑の子」としての生き方を強いられていた二人が、「生きたい」という願いを共鳴させ、苦しい状況の中で「この日ノ本に生きる全ての者の光に」と誓うのに胸が詰まる。 南北朝の動乱の行末を知っているだけに、残りのページ数が少なくなるにつれ辛くなったし、分かっていてなお「どうか」と祈らずにはいられず、最後は涙してしまった。今村さんらしい、読む者の感情を熱く掻き立てる作品だった。
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