セルジオ
@sergio
◎ネオンテトラ
あの人の子がほしい。そう思った女性が、思惑どおり手に入れ我が子となった「娘」と手を繋ぎ歩く描写は、なんともやわらかく、幸せにあふれている。だからこそ、そこにいたる過程に、その女性に、ゾッとする。
◎魔王の帰還
再婚相手が娘に手を出したのに、プライドが許さず「娘が夫に手を出した」と周りに言う母親。そのせいで近所の子や学校でいわれもないあだ名が囁かれ生きづらさを感じる女子高校生。暴力沙汰で甲子園を逃し転校先ではれものをさわるように接せられる男子生徒。そんな2人に魔王の言うことはいつも気持ちがいい。本当だとしても本人に向けて言うたらいかんことがある。そんな魔王が家族に隠してきた夫婦の秘密のいじらしさにほろりとし、ラストも爽快。作中で知った金魚すくいの技の豆知識もうれしい
◎ピクニック
若い頃にまだ幼なかった次女を失った女性が、孫(長女の娘)の子守りをしている間に孫娘が亡くなり、逮捕される。司法手続きの展開とは違う意外なラスト。その後を想像しゾッとする
◎花うた
兄を殺された女性の、取材を受けて掲載された記事への「化粧を施されたような」という感想に、どきりとする。憤りから始まった受刑者との手紙のやり取りは、犯罪への罪悪感のない様子や背景の過程環境にリアルさを感じさせる。そしてそこから始まる言葉と想いのやり取り、意外な展開がもたらす結末に、救いを感じる。なかなかこうはいかない、これほど素直にはなれないとおもいながらも、スッと入ってくる。犯罪者と被害者、そらぞれが素直さに思いをぶつけ合えれば、こんなふうになれるんだろうか。
◎愛を適量
俺のモノをやれたらいいんだけど。その言葉が、トランスジェンダーの娘には響いた。それは、間違いなく肉親への素直な想いだったと。なんだか、いい話。古典とりかへばや物語の「とりかえばや」に込められた感情もこの小説で初めて知った。
◎式日
嫌い、は終わりだけど、好き、は始まり。だから怖い。