さみ "私の小さな日本文学" 2025年5月11日

さみ
@futatabi
2025年5月11日
私の小さな日本文学
私の小さな日本文学
チェ・スミン
高校生のとき、教科書でいくつか近代の日本文学にふれてから本を読むようになって、これからまだ見ぬたくさんの本を読めることに胸を膨らませたり、どこでどんな本を読もうか、今日はどの本を鞄に忍ばせてみようか計画したり、人と話したくなくてとりあえず本を読んでやり過ごしたり、そういう振り返ればきらめいているような時期に結びついているのが近代の日本文学だったーーということを読みはじめてやっと思い出した。小説を読まなくなって、まして近代の作品に手を伸ばすことはめっきりなくなって、そうするとそれに親しんでいたときの記憶ごとさっぱりなくなるものなのだなあ。 短編はほんとうにみじかいけど、あとがきにもあるように、みじかいなかに宇宙が詰まってる。読み終わってぼんやりしているとき、時間の流れが気にならなくてふしぎだった(それこそ宇宙遊泳のような)。ひとつひとつの短編にささやかな一文が添えられていて、どんな意味を込めたのだろう、読みとったのだろうと考えるのもたのしい。書きながら思ったけど、でもかつて近代文学を読んでいたときは、すてきなものを見つけるぞという意欲よりも、有名な、多くの人に親しまれた作品を一つでも多く読んでおきたいとか、お気に入りのものをもっと深めたい・広げたいとか、そういう方向性だったような。知っている作家の知らない短編、知らない作家だけど本のなかでだいじに拾われた短編、こういうものをゆっくり味わうのはやっぱり大人になってからでないとわたしにはできなかったことかも。
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